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広島高等裁判所岡山支部 昭和48年(行コ)4号 判決

岡山県児島郡灘崎町彦崎二九一七番地

控訴人

備南土地株式会社

右代表者代表取締役

小林朝一

右訴訟代理人弁護士

岡本貴夫

同県倉敷市児島味野本町一の一五の二

被控訴人

児島税務署長

藤田正治

右指定代理人

清水利夫

松下能英

島津厳

三坂節男

加藤堅

南葉克己

右当事者間の法人税更正決定処分、源泉所得税の本税徴収および加算税賦課決定審査請求棄却裁決処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し、一、昭和四一年一月二九日付でなした控訴人の自昭和三六年一二月一日至昭和三七年一一月三〇日事業年度分法人税につき、課税所得金額八、〇一七、〇〇〇円、これに対する法人税二、九四六、七二〇円とする更正処分、及び過少申告加算税一四七、三〇〇円とする賦課決定処分、二、昭和四二年六月一四日付でなした控訴人の昭和三七年六月分の源泉所得税につき、課税給与額八、〇三一、六〇〇円、これに対する本税三、一七一、三〇〇円とする納税告知処分及び不納付加算税三一七、一〇〇賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

二、当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は次のとおり訂正、付加するほかは原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1. 原判決一一枚目裏二行目に「一三四四万円」とあるのを「一三四万四、〇〇〇円」と改める。

2. 原判決別表五の三項の税率欄に「上記金額に五〇%を乗じ、八四四、五〇〇円を控除(昭和三七年法律第四四号所得税法の一部を改正する法律附則別表第四)」を付加する。

3. 控訴代理人の陳述

仮に、控訴人が訴外佐藤栄八から本件土地を買受け、これを訴外小林起久子に譲渡したものであるとしても、右譲渡の日は昭和二六年一二月一七日ころである。このことは、控訴人が同じく佐藤栄八から昭和二六年中に取得した本件土地の周辺の土地、岡山市岡字大道下一九五番の一一宅地一二一坪七合六勺、同所一九三番の一〇宅地四坪等を同年中に訴外大枝豊男らに売却していることからも明らかである。

よつて、被控訴人が控訴人に対し、控訴人が本件土地を昭和三七年六月九日に小林起久子に譲渡したことを前提としてなした本件賦課決定処分は失当である。

4. 証拠関係

控訴代理人は当審証人木村誘一郎、同三宅寿志、同岡田悟、同小林トメの各証言及び控訴人代表者本人尋問の結果を援用した。

理由

一、当該裁判所は当審における証拠調べの結果をも斟酌して審究した結果、控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断するものであり、その理由は次のとおり訂正、付加するほかは、原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。

1. 原判決三枚目表二行目の「乙一四号証の一、二、」の次に「乙一九、二〇号証、」を、同三行目の「乙二四号証、」の次に「甲七、八号証」を同一〇行目の「阿部栄一の各証言」の次に「原審及び当審における控訴人代表者本人尋問の結果(一部)、」を付加する。

2. 原判決四枚目表八行目から九行目に「一三四四万円を同年一二月一五日頃を最終回として」とあるのを「一三四万四、〇〇〇円を、昭和二六年二月一九日四五万円、同年九月一八日二〇万円、同年一二月一五日ころから四八万八、三二〇円、同年末頃残額二〇万五、六八〇円に分割して」と、同一二行目に「一三四四万」とあるのを「一三四万四、〇〇〇円」とそれぞれ改める。

3. 原判決五枚目表一〇行目の「小林起久子」の次に、「同小林トメ」と、同六枚目表一二行目の「小林起久子、」の次に「同小林トメ、原審及び当審における」を付加する。

4. 原判決六枚目裏一一行目に「および昭和二八年一〇月二九日」とあるのを「(所有権移転登記は昭和二八年一〇月二九日)」と改める。

5. 原判決七枚目表五行目の次に左のとおり付加する。

もつとも、証人小林起久子、同小林トメの各証言、原審及び当審における控訴人代表者本人尋問の結果によれば、小林トメは昭和二六年一二月三一日頃、右二筆の土地代金約二〇万円を佐藤栄八方へ持参したことが認められるけれども、右認定の事実等からすると、それは控訴人が佐藤栄八から買受けた前記土地の残代金二〇万五、六八〇円の支払いに充てられたものと認めるを相当とする。

なお、控訴人は、仮に控訴人が佐藤栄八から本件土地を買受け、これを小林起久子に譲渡したものであるとしても、右譲渡の日は昭和二六年一二月一七日である旨主張する。

なるほど、控訴人は前記二の1ないし3認定のとおり昭和二六年二月一九日と同年九月一八日の両日にわたつて佐藤栄八から買受けた土地の半ば近くを、右買受後間もなく右土地の借地人らに転売していること、右転売土地の所有権移転登記はいずれも右転売後相当の年月を経た後(この点は原審証人岡田悟の証言によつてこれを認めることができる。)、中間者(控訴人)を省略してなされていることなどからすると、本件土地についても、控訴人主張の頃に控訴人がこれを小林起久子に譲渡し、中間(控訴人)省略登記の便法上、直接買主を小林起久子として甲一、二号証を作成したものと推測し得ないでもない。

しかし、前認定のとおり甲一、二号証の日付の作成が実体に符合するものとは認めがたいこと、控訴人が前記のとおり当時一四歳の中学生であつた小林起久子に、ことさら本件土地を譲渡すべき特段の事情を認めがたく、また前認定のとおり、下西川町の二筆の土地代金が小林起久子のために出捐されたものであることを窺うに足りる特段の事情を認めがたいこと、小林起久子に対する本件土地の所有権移転登記は前記のとおり昭和三七年六月九日であるところ、昭和二六年一二月一七日に譲渡したとする右土地の所有権移転登記を、分筆等の問題があつたにしても、ことさら右日時までに遅延させるべき特段の事情が認められないことなどからすると、到底前記推測を維持して控訴人の主張を認めることはできない。

二、したがつて、右と結論を同じくする原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺忠之 裁判官 山下進 裁判官 篠森眞之)

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